同じ商品を扱っていても”売れる人”と”売れない人”がいるのはなぜでしょうか?
成約率が高い担当者のセールストークには、図らずとも心理学を応用していることが多くあります。
どんな契約においても最終決定を下すのは人間です。
ですので人間の心理を知って営業トークをするのと、知らずに営業トークをするのでは大きな差が生まれるのです。
本記事では営業成果に直結する、営業に応用できる心理学について解説します。
営業に心理学を取り入れるメリット
営業トークに心理学を取り入れることで、以下のメリットが期待できます。
- 成約率向上
- 契約単価の引き上げ
- 高いモチベーション維持
成約率の向上、契約単価の引き上げにより、目標達成のための見込顧客が少なくてすみます。
計画達成までの期間を短縮できることから精神的苦痛から開放されます。
営業が楽しくなって高いモチベーションを維持することが可能になります。
つまり、あなたの生産性を大きく向上させる効果が期待されます。
営業で使える心理学
ドア・イン・ザ・フェイス
顧客への要求(依頼)は大きい方から
譲歩的依頼法と訳されるドア・イン・ザ・フェイスは「shut the door in the face」(門前払い)を由来とする手法です。
具体的な方法は最初に「大きい要求」をして一旦、断らせることで本命である次の「小さい要求」を断らせにくくするテクニックです。
アメリカ州立大学にて次の実験をしました。
Aグループの学生に対しては、はじめから本命の依頼である 「青年を動物園に連れて行って欲しい」ことを依頼。
Bグループの学生に対しては、本命ではない依頼である 「これから2年間、毎週2時間、青年のカウンセリングをして欲しい」 と依頼し、断らせたうえで、本命の依頼である 「青年を動物園に連れて行って欲しい」 と依頼。
本命の依頼に対する承諾状況は、Aグループの学生が17%、Bグループの学生が50%となりました。
これは、返報性の原理を利用したテクニックです。
返報性の原理とは、「相手が譲歩(ハードルを下げる)してくれたら、自分も譲歩(承諾)しなければならない」という行動心理です。
1度断っていることから断りにくいことに加えて、大きい要求のあとに小さい要求を受けたことから「コレくらいなら良いか」という感覚も手助けとなって承諾率が上がると考えられています。
一定の見込顧客に効果あり
承諾率を向上させるテクニックであり、一定の見込がある顧客に対し使用します。
本命の要求=15万円のカスタムプラン契約
あなた:「弊社おすすめのフルサポート付のプランでしたら30万円でご提供が可能です。」
顧客 :「30万円かぁ。ちょっと高いなぁ。」
あなた:「では、サポートを必要な部分のみにしぼったカスタムプランでしたら15万円でのご提供が可能です」
過度に大きい要求(依頼)は厳禁
最初に依頼する本命ではない大きい依頼は、顧客にとってのベストな提案であることが必要です。
断らせる前提での提案であるとは言え、ベストな提案を超える、無駄な提案であったり、顧客の意図にそぐわない過大すぎる提案は、顧客からの信頼を失うことにも繋がります。
ですので、断らせることに気を取られて、とんでもない提案をしないように注意が必要です。
フット・イン・ザ・ドア
要求(依頼)は小さい方から
段階的養成法と訳されるフット・イン・ザ・ドアは、最初に小さな要求をして徐々にハードルを上げることで、本命の要求を断りづらくする手法です。
スタンフォード大学の実験で次の実験が行われました。
戸建て住宅に住む住民をAグループ、Bグループに分け、
Aグループには「庭先に交通安全の看板を設置させて欲しい」と依頼する。
Bグループには「交通安全のステッカーを家か、車の窓に貼らせて欲しい」と依頼した後で、「庭先に 交通安全の看板を設置させて欲しい」と依頼する 。
本命である庭先への看板設置の承諾率はAグループ16%、Bグループ76%となりました。
これは心理的法則である一貫性の法則を法則を利用した手法です。
一貫性の法則とは、人は無意識のうちに、行動や思考、言動に一貫性を保とうとする行動心理です。
「相手によって態度が変わる」、「言うことがコロコロ変わる」と言われるのことに悪い印象を受けるのは、この一貫性の法則が保たれていないことによるものです。
一般的には、定額サービスの無料期間や、試供品の提供、無料メルマガ登録、街頭アンケートなどが、この手法を活用したものです。
顧客との信頼構築に効果あり
関係を構築しながら承諾を得る手法であり、見込みの薄い顧客や、関係を構築したいと考えている顧客に有効です。
本命の要求=パンフレットを用いた商品(サービス)の説明
あなた:「少しだけお話よろしいですか?」
顧客 :「話だけなら」
あなた:「こちらのパンフレットをお渡ししても良いですか?」
顧客 :「パンフレットだけなら」
あなた:「パンフレットについて説明させていただいてもよろしいですか?」
最初の要求(依頼)は小さくし過ぎない
最初の小さな依頼は、本命の目標から逆算した適切なサイズ感の依頼であることが必要です。
最初の依頼を小さくし過ぎると、本命の目標までの依頼は小さくなる一方で、何度も相手に要求をすることとなり、逆効果となります。
具体的には、3回~5回程度の小さな依頼を繰り返すことで、本命の依頼に辿り着けるイメージで段階を踏むと良いでしょう。
ドア・イン・ザ・フェイスとの違い
先に解説したドア・イン・ザ・フェイスと混同してしまう方がいらっしゃると思いますので、ドア・イン・ザ・フェイスとフット・イン・ザ・ドアの違いをまとめておきます。
要求する順番 | 利用する行動心理 | 有効な対象先 | |
---|---|---|---|
フット・イン・ザ・ドア | 小⇒大 | 一貫性の法則 | 見込なし顧客 |
ドア・イン・ザ・フェイス | 大⇒小 | 返報性の原理 | 見込あり顧客 |
返報性の原理
好意的な人に好意を抱く
人は他人から何か良いことをしてもらったら、「お返しをしなければいけない」という感情を抱きます。これを返報性の原理といいます。
この返報性の原理を利用して小さな貸しを与えることで大きな見返りを受け取ることができるのです。
スタンフォード大学では学生81人に対して次の実験が行われました。
学生は仕掛け人とともに休憩室に待機しています。
Aグループの学生には、仕掛け人から飲み物を渡す。
Bグループの学生には、仕掛け人から飲み物を渡さない。
その後、学生に対し仕掛け人から、「商品が当たるかもしれないくじを何枚でも良いから買って欲しい」と依頼します。
結果としては、Aグループの学生はBグループの学生の約2倍の枚数のくじを購入しました。
Aグループの学生は、「飲み物を貰ったお礼をしたい」という心理が働き、Bグループの学生よりも多くのくじを購入したと考えられます。
この手法は家電量販店などで多用されています。先日私が、家電量販店でシャワーヘッドを見ながら迷っていると、店員さんの方から「お値段出しますね」と言って、表示価格から値引きをしてくれました。
そうすることで、私は「せっかく値引きしてくれたのだから、買わないと」という心理状態になり、まんまと購入しました。
顧客を愚直に喜ばせる
- 顧客の役に立つ情報の提供⇒いつも良くしてもらっているから・・・
- 販促品の提供⇒商品をもらったから・・・
- 訪問頻度の向上⇒いつも良く来てくれるから・・・
顧客からの見返りは求めない
見返りを期待するあまり、見返りを求め過ぎてしまうことは逆効果につながります。
あなたがお客様のためにやっていることが、実はお客様のためではなく、見返りを受ける自分自身のためにやっていることだと感じさせてしまうと、返報性の原理は働きません。
「○○しますので○○してください」ということを言ってしまうのは当然ながら、言わないまでもお客様に感じさせないように注意が必要です。
効果を発揮させるには愚直に”お客様のために”を継続することが重要です。
バンドワゴン効果
人は周囲の意見に引っ張られる
人が何かを選択する際に人の影響を受けないということはありません。必ず周囲の影響を受けます。
人は他人がみんな持っていれば欲しいと思い、行列ができている店はおいしいと思います。
これをバンドワゴン効果と言います。バンドワゴン効果を利用することで、顧客に対する契約時の一押しが可能となり成約率を高めることができます。
アッシュの同調実験という、人間は周りの意見にどれくらい影響を受けるのかを検証した実験があります。
被験者は複数人の仕掛人と共に簡単な課題に挑戦します。仕掛人はたまに、間違った解答を満場一致で選択します。
例えば、明らかに正解が1である課題に対して、自分以外の全員が3と答えた場合に、どれだけ影響を受けるのかを検証した実験です。
結果としては、周りの人が一斉に誤った解答を選択した際の正答率が明らかに低下しました。
これは被験者の解答が、仕掛人の解答に影響を受けたものと考えられます。
このバンドワゴン効果は、チラシやPOPで「当店売上ナンバー1」や、「今、売れています」といった案内文として一般的に使われています。
取引実績で信頼度アップ
営業マンがバンドワゴン効果を活用するにはお客様との取引事例を紹介するのが良いと考えられます。
- 何社(人)の方が導入しています
- 取引シェアは○○%です
- 人気ナンバー1のプランです
- 導入企業のリピート率は○%です
誇張表現には注意が必要
”自社サービス(商品)の良さ”や”顧客からの支持”をアピールする必要がありますが、当然ながら嘘や誇張表現はいけません。
契約・成約後のトラブルに発展したり、あなたの営業マンとして信頼度を大きく損ねることにも繋がります。
ハード・トゥ・ゲット・テクニック
承認欲求を刺激して信頼を獲得
ハード・トゥ・ゲット・テクニック は「特別に」や「御社だけに」といった”特別感”を用いてお客様からの信頼を獲得するものです。
これは人間が本能的の持っている承認欲求を刺激することで、特別扱いをしてくれた相手に対して好意的になることを利用した手法です。
営業での活用方法
特別感を伝えることで信頼感を得る技法なので、顧客へのプレゼン時に使用するのが効果的です。
- 「お客様のための特別価格でご提案させていただきます。」
- 「この価格は期間限定でのご案内ですので、早めのご検討をお願いします。」
- 「会員様限定でキャンペーン価格でご案内できます。」
顧客との関係に注意
この手法は相手に特別感を与える必要があります。ですが、誰かれ構わず「御社(あなた)だけに」と言ってしまうと逆効果になることがあります。
例えば、初めて訪問した企業や、初めて会ったお客様に対して使用すると、”調子の良いことを言う営業マン”という印象を持たれ、あなたへの信用、信頼を損ねることに繋がります。
ですので、新規開拓業務での使用ではなく、ある程度取引のある顧客に対し、ここぞという時に使用することがポイントです。
心理学の学習方法
関連書籍の読書
営業に関する心理学を習得するには関連書籍の読書が一番効果的です。
ですが、心理学はとても奥が深いうえに、営業に活用しやすい手法と、そうでない手法もあり、どの本を読めばよいか分からないと思います。
そこで、少しですがおすすめの本を紹介しておきますので参考にしてください。
心理学勉強に最適な書籍
ロールプレイング
知っていることと、使えることは全く別物です。
どんなにレシピを読みまくったところで、おいしい料理は作れるようになりません。
同じように、どんなに本を読みまくったところで、お客様との交渉は上手くなりません。
本を読んでインプットしたことは、繰り返しアウトプットすることで習得しなければ意味がありません。
そのためには反復的なロールプレイングが効果的です。
レシピ本を読むというインプットをしたあと、実際に料理を作るというアウトプットをすることで料理は上達します。
お客様との交渉についても全く同じで、読書をするというインプットをした後にロールプレイングというアウトプットを繰り返すことで、成約率が向上するのです。
まとめ
営業は心理戦です!
心理学をセールストークに組み入れることで、顧客からの信頼獲得や成約率の向上、成約単価の向上に期待できます。
営業で成果を出している営業マンは、無意識のうちに心理学を取り入れたセールストークを行っています。
営業に心理学を取り入れるには知識のインプットに加えて、アウトプットを繰り返す必要があります。
インプットは関連書籍の読書、アウトプットはロールプレイングでの反復練習が有効です。
皆さんも、優秀な営業マンのセールストークを自分のものにして楽しい営業生活を送ってください。
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営業マンの成長や、営業マンに多い悩みに対する解説記事を執筆しています。よければ、他の記事も読んでみてください。
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